相続税申告で税務調査を受けやすい人と対策方法

相続税の申告で税務調査を受けやすい人と対策方法

相続税は他の税金と比べ、税務調査を受ける確率の高い税金であり、相続税を申告した人の中でも、実は調査対象となりやすいタイプの人がいます。

今回は税務調査を受けやすい人と、調査を受けないための対策について解説します。

相続税の税務調査は申告した人の10%は調査対象となる

相続税の実地調査は、申告した人の約10%以上に対して行われます。

実地調査とは、税務署職員が納税者の方の自宅へ訪問し、相続人に質問する調査方法です。

平成30事務年度に行われた相続税の税務調査は、平成28年に亡くなった方を中心に実施されており、実地調査件数は12,463件です。

平成28年分の相続税の申告書を提出した人の被相続人は105,880人なので、申告書を提出した1割以上が実地調査を受けていることになります。

他の税金と比べてみますと、所得税の調査件数は実地調査のほか、電話などの簡易な接触調査も含めて約62万件です。

所得税の申告書の提出件数は2,200万件以上ありますので、調査を受ける確率は2.8%程度しかなく、相続税の方が税務調査を受けやすい税金といえます。

 

税務調査の対象者となり相続税の申告書

国税庁は、税務調査の重点事項を毎年掲げており、重点項目に該当する人は税務調査を受け約なります。

相続税の税務調査の重点項目は、富裕層・国外財産の保有・無申告の3点なので、それらに該当するケースをご紹介します。

 

富裕層は無条件で調査対象になりやすい

富裕層は一般の方々よりも相続税対策をしており、節税方法によっては税務署から税金逃れの疑いを持たれるケースも少なくありません。

相続財産を多く保有していると、申告漏れとなる財産や相続税評価額を間違えてしまうこともあります。

また相続税は課税対象財産が多いほど税率が上がるので、同じ金額の財産を申告漏れになっていた場合、課される税金や加算税・延滞税のペナルティーの金額は、富裕層の方が多くなります。

そのため、たとえ相続税を適切に申告したとしても、富裕層は税務署から申告漏れを疑われたり、財産内容を確認するために調査を受ける可能性が高いです。

 

国外財産に対する調査は年々厳しくなっている

税務調査

海外資産は国内にある財産と比べ、所在を把握するのが難しいため、相続税の納税額を少なくするために財産を国外に持ち出す人が増えています。

そのため税務署は、海外に財産を保有している人を対象とした税務調査に、近年力を入れています。

日本に住んでいる状況で相続が発生した場合、基本的に世界中にある財産すべてが相続税の課税対象ですので、海外に資産を持ち出すだけでは、相続税は回避できませんので注意してください。

なお国税組織は海外資産を把握するために、金融機関に対し法定調書の提出を義務づけており、100万円を超える国外送金の情報は把握しています。

また世界各国と連携することで、海外にある資産を調べられる仕組みを構築しているため、海外資産の申告をしていないと、すぐに指摘される可能性があります。

相続税が無申告だと実地調査を受けやすい

相続財産が基礎控除額を超えれば、相続税の申告は必要です。

税務署は登記で不動産の所有者を確認できますし、金融資産は銀行や証券会社を調べることで口座まで把握することが可能です。

また確定申告していれば、毎年の収入から蓄積財産を推測できるため、申告しなければいけない人が無申告の場合、実地調査で無申告を指摘されることになります。

なお税務調査で申告漏れを指摘された場合、本税以外に加算税・延滞税を支払いますが、無申告だった場合、加算税は5%多く納めなくてはなりません。

相続税の税務調査を回避するための対処法

相続税申告

相続税は税務調査を受ける割合は高い税金ですが、しっかりと対策を行うことで調査を回避することも可能です。

相続税を適切に申告するのは絶対条件

税務調査を回避するために最も大事なのは、相続財産を把握し、正しく申告することです。

亡くなった人の財産を把握していないと申告漏れになりますし、評価額の計算誤りがあれば税務署から指摘されます。

また節税は合法ですが、脱税は違法です。

法律の範囲内で行う相続税対策をすることで、納める相続税を抑えるのは適法なので、税務署も節税自体を否認することはしません。

一方で脱税は違法なため、税務調査により脱税を指摘しますし、脱税した内容が悪質だった際は、重加算税や逮捕されるリスクもあります。

 

申告の際に使用した資料を申告書に添付する

相続税の申告書に添付書類には、「法定添付書類」と「任意添付書類」の2種類あります。

法定添付書類とは、法律で添付することが定められている書類で、戸籍謄本や遺産分割協議書の写しなどでがあります。

一方任意添付書類は、申告書を作成する際に使用した参考書類をいい、法律上の添付義務はありません。

税務調査は申告漏れや不正を指摘するために調査を行うケースと、申告内容を確認するために調査をするケースがあり、確認調査は特例適用の可否判定や、相続税評価額計算が適切に行われているかを調べるために実施されます。

法定添付書類以外に提出された書類がない場合、税務署は特例適用に至った経緯や評価額を算出した過程がわからないため、内容確認のために確認調査を行うこともあります。

そのため相続税の申告書を提出する際は、参考資料を添付することも調査を回避するためには必要です。

 

税理士へ申告書の作成依頼をする

税理士

税理士は税金の専門家ですので、相続税の計算を適切に行うだけでなく、節税方法についてもアドバイスしてくれます。

また税理士の書面添付制度を利用して申告すると、税務署は税務調査を行う際、税理士へ意見聴取を先にしなければならず、意見聴取で税務署の調査事項が解明されれば調査は実施されません。

書面添付制度とは、税理士が相続人に申告書を提出前に聴き取りを行う制度で、国税庁は書面添付制度の利用を積極的に推奨しています。

そのため書面添付制度を利用して申告すると、通常よりも税務調査を受ける確率が下がります。

 

相続税の申告は早めに準備することが重要

相続税の申告書は、相続財産の確認や評価額の計算、必要書類を揃えなければなりません。

そのため申告期限間近になってから税理士に申告書の作成依頼をしても、断られる可能性がありますのでご注意ください。

また相続税は亡くなった人の全財産が対象です。

申告書に記載していない財産があれば、申告漏れ財産として加算税・延滞税の対象となりますので、早い段階から申告準備をしてください。

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